もともと絵が好きで、良いものに囲まれて暮したいと、三十年来収集を続けてきた版画で、自宅の
応接間の壁を埋め尽くして美術館の名のりをあげたのは、元小学校教諭の御村良隆さんである。美術
館の看板は出していないが、来訪者があれば茶室に招き、自作の茶碗で茶をたてて語らうという粋な
館長さんは、日々是好日と言って揮らない。版画は額縁に限らず軸装して床の間にも掛けてみる。壁
面に合っていれば廊下でもトイレでも美術館になるという。
御村さんが版画の収集を始めたのは戦後間もない頃で、今は町田の版画美術館館長になられた久保
貞次郎さんが当時提唱した「創造美育運動」の影響を受けてのことだが、このような運動は、後に「た
とえ一坪でも心がこもっていれば立派な美術館である」という考えの「わたくし美術館運動」に広が
った。そして御村さんは「日本一小さな美術館」を標榜して収蔵版画二百点で美術館を開いた。